木原 純子
6月12日(木)
その、6番目の女の子が、この春ぴっかぴかの新1年生になった。おばあちゃんからも「何か学用品を買って」とお祝いに2万円をもらった。
しかし今年はどういうわけか赤い中古のランドセルを2つ頂いていた。
2つも与えられているのに、新しいのを買うべきだろうか。 随分葛藤した。そして本人に聞いてみた。「このランドセルでいい? 」
ちょっと考えて「うん、いいよ。」という答えが返ってきた。私自身はひとりっこ。なんでも新しいものを買ってもらって育ってきた。上の子たちも当然のようにして、新しいランドセルを買い与えてきた。
しかし、なんだかここに来て、この子なら乗り越えてくれるんではないか。そう思ったのだ。 これから、大変な時代がやってくる。1999年以来戦争時代に戻っていく様な法律ばかりが可決されていく。ある物で感謝できなかったらどんなに大変な人生になるだろう。古い物でも本当に感謝できる心が与えられたらどんなに素晴らしいだろう。
でも、まだ一年生。とにかくこれで通ってみて何かあったら、その時買ってあげたって遅くない。夫に相談して、そう心に決めていた。
古いランドセルをからって入学式に向かう妹を、長女は不憫に思って心配してくれた。しかし入学式は無事に終えて帰ってきた。それから、数日後。事件は起こった。
クラスの男の子に「ぼろっちいランドセル! 」といじめられて帰ってきたのだ。わんわん泣きじゃくっていた。私はすぐに「ランドセルを買いに行こう!
」と立ち上がった。ところが甘くなかった。入学式を過ぎるとほとんど大手のスーパーやデパートではランドセルを製造元に返してしまうのだ。
電話で探してやっと1軒。くまのぷーさんの赤いランドセルがダイエーにあったので、大急ぎで購入した。しかし本当の気持ちを本人に聞いてみると、遠慮がちに「ほんとはね。ピンクのランドセルがほしいんだ。」とそう言った。この際本当の願いをかなえてあげたい。ここからが私のガンコなところ。公衆電話に立ち尽くすこと30分。片っ端からピンクのランドセルを聞き続けた。
「ありますョ! 4万円です。ピンクのランドセルは高いんですよ。」 「よ、4まんえん!
」
こんなやり取りの後、ついに見つけたのだ。 「ありますョ! 5千円です。」「ご、5千円ですか? すいません、それ大丈夫なんですか?」不審に思ったが、いったん買ったプーさんのランドセルを返却して行ってみると何とコクヨのとっても上質な、上品なピンク色のランドセルが2つ売れないで残っていた。「さっき コクヨに電話をして最後だから5千円にしてくれるよう頼んだところだったんですよ」
私の心は、飛び切り上等なばら色になった。そしておまけに、キティちゃんの魔法瓶の水筒まで買ってあげることができた。
翌日、学校に言ってこの子がいじめっ子の男の子に言った言葉。
「わたしはね。あんたのおかげで、ピンクのランドセルを買ってもらったんだからね!
ランドセル事件