木原 純子
8人の子育て日記
8月14日(木)
 私たちの家は、長崎のほぼ原爆が落下した地点にある。窓を開けるとうっそうとした平和公園の森から、ジーン、ミーンとせみの鳴き声が聞こえてくる。原爆中心碑まで徒歩1分。坂をあがるとすぐ原爆資料館だ。この上空500メートルのところで原始爆弾が炸裂し、戦争は終結した。 

 原爆記念日の9日から敗戦した15日まで、長崎は騒然としている。長崎空港も原爆反対のさまざまな団体でごった返していた。今日も降りしきる雨の中、韓国の教会の若者たちが、「イエス・キリストはあなたを愛しています。」という大っきな横断幕をもって記念撮影をしていた。

 原爆資料館を訪れる人は多い。うちのわんぱく坊主2人は、クーラーが効いていて涼しいからと夏休みの宿題を持って行った。ここでは原爆の悲惨さを学ぶことが出来る。しかし、同時に日本人の加害性を学ぶならば、『岡まさはる記念館』がお勧め。1人の牧師が私財を投じて創った。JR長崎駅から西坂公園の方に坂を登ったところにある。これは一生のうちに一度は行ってみる価値のある穴場のスポットである。

 8月9日は毎年、子供たちの登校日。語り部の人がお話をしてくれるが、家では、原爆の大変さと共に、「でもね。日本の人もアメリカの人をなぐっちゃったんだよ。」とパールハーバーのことを話すようにしている。そして、「ごめんなさい、って言わないと本当に平和にはならないんだよ」と。子供たちにとっては50年以上も前の話だが、そんな時代がまたやってくるのではないかとかなり真剣になっている。  

 とは言っても子供たち。今ではもう数年前のことになるが、浦上川へバケツと魚とりの網を持って出かけて行った。(浦上川ーーーこの川はかつて原爆で焼けただれた人たちが水を求めて殺到した川である。) 長男もよくここで釣りをする。  

 ある朝の事だった。心地よい風が窓からはいって、私は気持ちよく眠っていた。と、何か黒い物体がごそごそと私の頭と目のあたりに上ってきたのだ。初め私はそれが何だか分からなかった。ので、のんびりしていた。半分眠っていたのだ。しかしその物体がついに私の顔の顔面にのし上がった!!
「ん?」「なに?」そう思って手でつかんで見るや否や、それは何と手のひらほどの大きさの『カメ』だったのだ!!

「ぎぎゃあああああああああああ!!」思わず手につかんだ亀を思いっきり、ドアのほうへ投げつけた。思いっきり目が覚めた。「冗談よしてよ。勘弁してよ。」それはうちのわんぱく坊主軍団が、せっせ、せっせと浦上川から運んだカメだった。しかもこれは小亀で、親亀は本当に4〜50センチはあった。こんな巨大なカメを持ち込んでいたのだ。

 小亀には申し訳なかったなぁと思いつつ、夏が来ると思い出す。原爆とは違うもうひとつの思い出。
夏が来れば思い出す