木原 純子
9月4日(木)
ハワイ料理
 
 「お母さん、私ね。今度ハワイで習ったお料理を作ってあげるよ!」
ハワイから帰ってきた長女から、信じられないくらいうれしい言葉を聞いた。3男はどうした訳か料理が大好きで、女の子ばかりの料理クラブに一人だけ入るほどの料理好き。でも、まさか、長女の口からこんな言葉を聞く日が来るなんて。

 「チューリップの形をした骨付きのもも肉とね、パイナップルの缶詰がいるんだよ。」 チューリップの形をした骨付きの肉?  たぶん小っちゃな子供の手でグーを握ったときのような肉のことを言っているんだろうと思った。家では骨を恐がる子もいてあまり買ったことがない。更にまた、家では一度も買ったことのないニンニクを買った。

 ともかくも、私は言われるままにアシスタントになった。今日は長女が主役なのだ。まず、大きな寸胴のお鍋にドクンドクンとたっぷりの油を入れる。そうしてニンニクを刻んだものを木杓子でいためる。だいたい私の料理といえば、しょうゆと砂糖位しか使った事がないものだから、何か高級そうでドキドキしてくる。それから、20 〜30 本位の骨付きの肉を鍋の中に放り込んだ。更にこれを炒める。どっさりあるので、ひっくり返すのがなかなか大変だ。

 十分炒めたら、今度はここにパイナップルの缶詰2缶を適当に切って、汁ごと全部入れてしまう。ここがポイント。その後、お醤油をボトボトと適当に入れて、みりんもまたボトボトと適当に入れる。それから、アルミ箔の中蓋を作り、蓋をしてグツグツと煮込む。「う〜ん。ほとんど全くのどんぶり勘定。」 私にはぴったりだ。

 しかし、しばらく煮込んで、長女とふたり不安になる。煮汁を取り出して味見をして見ると、これがまた何ともいえない微妙な味。肉の色も薄くておいしそうには見えない。どうしよう! 兄弟みんな、家族のみんなが期待しているのだ。特別に今日はおばあちゃんまで招待してあるのだ。「神さま、どうか、おいしく出来ますように。」祈らずにはいられない気分になってきた。そう、これが最大のポイントだった。

 不安になりながらも、しばらく中蓋だけにして煮汁を飛ばしていると、だんだんお肉に狐色からこげ茶色のいい色がしみてきて、とってもおいしそうな
雰囲気になってきた。「うん。大丈夫だよ! これならいけるよ!」と叫びながら、
最後にもう一度醤油とみりんを少しだけ加えて味を整えた。

 彩の良い野菜を付け合せにして、骨付きの肉とパインをお皿に載せると豪華さがグッと出てきた。パインの味が絶妙にしみこんでコクを出している。家の小さなお客さんたちの口は、全く遠慮がない。おいしいものは食べるし、まずいものは食べない。そんな中で、ハラハラしながら作った長女の処女作を、み〜んなおいしく平らげて、お替りも飛ぶように売れてしまった。

 今まで自信のもてなかった分野に、得意な料理が一つ出来た。長女も私もホントにうれしく思った。