木原 純子
12月31日(水)
 
紅白歌合戦
 大みそか。子どもの頃、大みそかと言えば、何で大きい味噌なんだろうと悩んだことがある。(毎月の月末をみそかといって、12:月だけを1年の締めくくりで大みそかと言うのだと後になって知った。) 

 レコード大賞を見て、紅白歌合戦を見て、それから除夜の鐘を聞きながら年越しそばを口に入れて、12時の時報と共につるつると流し込む。こんな大みそかを何年も過ごしてきた。
 
 でも、結婚して十数年、我が家にはずっーとテレビが無かったので、大みそかの過ごし方が全く変わってしまった。結婚した時に、冷蔵庫を買い、炊飯器を買い、洗濯機を買った。その時に、「テレビだけは買えない。テレビがあると、ずっーといつまでも見てしまうから、自分はテレビに弱いから置けないけどいいかな。」と夫が私に了解を求めてきたのだ。テレビ世代の私たち、テレビのない世界なんてやって行けるんだろうかと思ったし、へんてこな家庭と思われるかなとも思った。  後日、秋篠宮家の紀子さまも、学習院大学のお父様の教育方針なのか、全くテレビのない環境で育てられたと聞いて、ちょっと安心した。 
 
 でも、そのおかげでこの十数年、実にとっても充実した時を過ごすことができたのである。子ども達はテレビを見る代わりに、(というか、テレビと言う存在を知らないので)、毎日新しい遊びを発見していた。お風呂上りにバスタオルをかぶってシスターごっこをしてみたり、せんたくロープを部屋の端から端につり下げて、いろんな物を運ばせてロープウェイのようにしてみたり…。正直テレビがあれば随分楽ができたんだろうけれど、ちっとも後悔はしていない。古くからの友人がとにかく私のことを心配してくれて、「とっても楽になるよ。」とテレビゲームをプレゼントしてくれたのだが、これには後で大変な後悔をする事になってしまった。

 ところが、昨年初めて我が家にテレビがやってきたのだ。引越しをする人から譲り受けてもらってきた、大画面のテレビである。そんな訳で、我が家では今年初めて紅白歌合戦をちらりと見ることができた。「べに組ってなに?」 「えっ、赤組って言うんだよ。赤組は女の人ばっかりで、白組は男の人ばっかりでどっちが勝つかって競うんだよ。」と、そんな信じられない会話。途中から男の子に他局のキックボクシングに変えられてしまったが、どっちにしろ何だかとっても虚しい気分になった。一年の終わりをこんなことで過ごしてしまうのが、もったいなく感じられてしまったのだ。「せっかくの大みそか。やっぱり一年の感謝をして終わろうよ。」と言って、隣の台所に引き上げた。

 そうして、テレビを見ないことにとりあえず賛同してくれた4人の子ども達とこの一年間を振り返って、神様が良くしてくださった事を(私たちの目には良いとは思えなかったことも)、ひとつひとつ思い出しては、感謝のお祈りをして大みそかを過ごした。来年も良い年でありますように。