木原 純子
6月3日(木)
 
人ごとじゃあない!
 
 38歳の母親、高校生の娘を刺し自殺をはかって2人とも重体。
  
 こんなニュースが飛び込んできた。 
母親が長女を起すために3階の長女の部屋に入り、「学校に行きなさい」と叱ったところ、長女は「何で行かなあかんの」と言い、口論になったという。その後、母親が長女の背中や右腕など計9か所を刺して娘は重体。また母親も自らの手首3か所を切って倒れていた。

 思春期、反抗期のとても多感な高校生の娘を持つ母親にとって、この事件は他人事ではすまされない。私自身、ふっと、「これはいつか刺されるか、刺すか」どっちかだなんて、本気で思ったときがあった。「おかぁの育て方が悪かったんだ!」そう言われても、「はい、本当にそうです。おかぁの育て方が悪かったんです」とは言えないで、いつも言ってはならないことまで言ってヒートしている。

 そんな長女と2人だけで、先日パッションという映画を観に行った。キリストが十字架に架けられる最後の6時間を描いた映画で、今ロード・オブ・ザ・リングなどを抜いて全米で一位になっているらしい。映画なんて何年ぶりだろう。学生時代、E・Tを見に行って以来のことである。

 鞭打ちのところがすごくて、涙があふれて止まらなくなった。鞭で打たれてたくさんの血が流されるシーンに、「これは映画だ、映画だ、特殊メイクなんだから。」と必死でこらえながら何度も目をつむっては、どうにか最後まで観た。

 エンディングの音楽がなり始めて、配役の名前が流れ始めた時、涙で立ち上がれなかった。そして思った。「大丈夫だ! 長女はいやされる。」こんなにすごい十字架があったんだ、私が長女に負わせてしまった心の傷はいやされる…。
本当にそう思えてさわやかな涙がずっーと流れ続けていた。

 長女も、ずっーとタオルで顔をおさえっぱなしだった。そして、映画館を出たときに言ってくれた。「お母さん、ごめんね。」

 実際、イエス様の十字架の愛がなかったら、今頃ふたりとも生きているかどうかわからない。